ao

コロナ陽性者数・死亡者数の傾向分析

noteに書いた記事(https://note.com/aodayo/n/n10b1c643e74d)を転載しています。

企業分析と言いながら、ここ数日のコロナ陽性者数の増加が気になり、一方でいまいち数字がまとまっている記事がなかったので調べてみました。ただし、マクロ環境を知る意味では、最終的には企業の分析にも役立つかなと思っています。

【まとめ】
・コロナ陽性者数は6月末ごろから急増しているが、死亡者数の増加の伸びは陽性者数の5分の1程度である。
・コロナの致死率は、6月25日以降は3%程度で、仮に現状検出されていない無症状の陽性者が10倍超存在していたとしても、インフルエンザよりもかなり高い数値と思われる。
・一方、10万人当りの死亡者数は、今後の陽性者数の増加に伴い数字は増加すると思われるものの、現状はインフルエンザよりも多くはない。また、肺炎・自殺・糖尿病などの死亡者数ほどは増えないと思われる。
・直近の要入院者数と退院者数の傾向を見ると、すぐさま病床数が不足する状況にはならないと思う(長期的にはわからないが。)。
・元々、個人的にはコロナについて過敏になり過ぎではないかという気持ちが強かったが、今回調べてみて、大きくその考えが変わることはなかった。ただし、死亡者数の累計、致死率、要入院者の数と退院者数の推移はチェックし続けようと思う。

まず、そもそもの陽性者数については、6月末ごろから急増している。

画像1

次に、この増加は、PCR検査数の増加によるものだとの指摘についてを定量的に分析する。6月30日を基準にPCR検査数と陽性者数の指数(いずれも7日間平均を採用)を比較すると、PCR検査数は6月30日時点の3.8倍、陽性者数は10.3倍に増加している。よって、陽性者数増加の影響のうち3~4割くらいはPCR検査数の増加、6~7割は陽性者数自体が増えたのだと考えられる。

画像3

今度は、陽性者数と死亡者数との比較。下記グラフを見れば一目瞭然だが、陽性者数の増加量と比べ、死亡者数の増加量はかなり少ない。6月30日をベースに先と同様の指数比較をすると、陽性者数10.3倍に対して、死亡者数は1.8倍の増加に留まる(ただし、死亡者数の方は、数が少ないため指数でみるのは適切ではないかもしれない。)。

画像3

画像4

また、いわゆる致死率を調べてみると、6月25日以降は減少傾向で、直近は3%前後である。慶応義塾大学の菅谷客員教授によると、インフルエンザの致死率が0.05%程度(概算値、 https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14724 )なので、それと比べかなり高い。なお、北海道大学の西浦教授によれば、潜在的な感染者数は10倍超(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58509980V20C20A4EA2000/)との見解もあり、その意味では致死率はもっと低いのかもしれないが、仮に致死率0.3%だとしても、かなり高い数値ではある。

画像8

さらに、死亡原因別で、10万人当たりの死亡者数を比較する。コロナについては、2/5-7/31までの10万人当たり死亡者数0.8人を365日換算した1.7人を使用している。今後、感染者拡大により死亡者数が増加した場合、交通事故(4人)・インフルエンザ(2.1人)・結核(1.9人)より多くなる可能性はあると思われる。一方、感覚的ではあるが、肺炎・自殺・糖尿病ほどの数になるかというと、そこまでは達しないのではないかとも思う(なお、コロナ以外の数値は2017年のデータ。)。

画像6

正直、死亡者数からすると、どこまでコロナを意識すべきかという思いはある。ただし、入院が必要な陽性者数については注意が必要かもしれない。新型コロナウイルスダッシュボード( https://www.stopcovid19.jp/ )によると、現状対策病床数は32,014床である。それに対して、入院が必要な患者数は7月31日時点で8,945人であり、陽性者数が指数関数的に増えた場合は、すぐにキャパシティ上限に達してしまいそうな気がする。

画像9

【大幅に訂正(8月9日)】
入院治療が必要な人の増減について、試算が誤っていたので、訂正しております。
-----
陽性者数・入院治療が必要な人の増減・退院者数の推移を7日平均ベースで調べた(5月8日に公表基準が変更となっており、5月9日以降について分析)ところ、陽性者数のほぼ全員が入院治療が必要な人と判断されている。直近、退院者数が増えており、入院治療が必要な人の伸びはやや鈍化している。

画像9

----- 

さて、ここまで数値的な事実関係を整理した。調べてみる前は、コロナ自体はそれほど脅威ではないという私見ではあったが、半分正解、半分不正解といったところだろうか。陽性者数の伸びと比べて死亡者数の伸びは著しく低いし、コロナで死ぬことは、交通事故にあって死ぬ確率よりも(少なくとも現状は)低い。例えば、インフルエンザに罹り肺炎を併発した方がよっぽど怖い。一方、病床数が不足するリスクはあり得るので、本当に気にすべきはこの点だと思う。

そのためにやることは、よく指摘されているように、コロナに罹患した場合、重症ではない患者はそもそも入院せず、全国に162万室あるホテルや旅館(しかも従業員は不要だと思う。)を利用すればいいし、一人暮らしであれば家から出なければいいを徹底するだけではないか?もちろん、監視の目が利かなくなる点は難しいと思うが。家庭の事情等で難しいという指摘を聞いたことがあるが、その人は諸事情により入院すら困難な人であるし、議論が成り立っていない気がする。また、最悪お金(最終的に国が補填すべき)で解決できる話しだ。

ただし、だからと言っていわゆる三密空間には可能な限り行くべきではないし、マスクの着用は必ずすべきではあるが、正直、気にかけていればある程度は避けられると思う(感染者数の増減については、このサイトのイメージが一番しっくりきた、 https://www.washingtonpost.com/graphics/2020/health/corona-simulation-japanese/ )し、自分の想定と違う事実はあったものの、罹ってしまったことをそこまで気にするほどの病気ではないという私見は、結局変わらなかったなと思う。

Source
厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html
総務省(人口統計): https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2.html#monthly
e-Stat: https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003214724